単一臍帯動脈と向き合う妊娠中の過ごし方

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妊婦健診で聞き慣れない言葉を告げられて、ネットで調べて余計に不安になっていませんか。「染色体異常」「18トリソミー」という文字が目に入って、怖くなってしまった方もいると思います。

先にお伝えしておきたいことがあります。単一臍帯動脈は、およそ100人に1人にみられる所見で、産科では比較的よく遭遇するものです。ほかに気になる所見がない場合、多くの赤ちゃんは健康に生まれています。

このページでは、単一臍帯動脈について、「産院に連絡してほしいサイン」「原因とのつき合い方」「数字や所見の受け止め方」「次に何を確認すればよいか」の順に整理します。今夜のあなたに必要なことから、順にお伝えしていきます。

気づいたら産院に連絡してほしい
4つのサイン

単一臍帯動脈と言われただけで、いますぐ受診が必要になるわけではありません。ただ、妊娠中に共通して「早めに連絡してほしいサイン」はあります。先に確認しておいてください。

このようなときは、迷わず産院に連絡してください
  • 胎動が明らかに減った、いつもより感じにくい
  • お腹の張りや痛みが続いている
  • 出血がある
  • 水っぽいものが流れ続ける感じがある(破水感)

「これくらいで連絡していいのかな」と遠慮する方がとても多いのですが、迷った時点で電話して大丈夫です。「結果的に何でもなかった」としても、それでいいんです。産院のスタッフはそういう電話に慣れていますし、連絡してくれたほうが状況を判断しやすいと考えています。

単一臍帯動脈そのものは、痛みや出血を起こす所見ではありません。健診のエコーで見つかり、その場では症状が何もない、というのが一般的です。「今日すぐ何かが起きる」というものではありません。

単一臍帯動脈は、
あなたの行動が原因ではありません

へその緒(臍帯)の中には、ふつう3本の血管——静脈1本と動脈2本——が通っています。このうち動脈が1本の状態が、単一臍帯動脈です。

なぜ起こるのか、その仕組みはまだ完全には解明されていません。はじめから一方の動脈がつくられない(一次無形成)、あるいはいったんできた動脈が細くなって退縮する(二次的萎縮)といった経過が考えられており、いずれも血管がつくられる、妊娠のごく早い時期に関わる変化とされています。

※参照元:Cleveland Clinic「Single Umbilical Artery (SUA)」
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/single-umbilical-artery

なお、多胎妊娠や妊娠前からの糖尿病がある場合に頻度が高いという報告はあります。ただしこれらも、「本人の努力が足りなかった」ことを意味するものではありません。

「あのときこうしていれば防げたのでは」と考えてしまう気持ちは、とても自然なことです。でも、それが原因であることを示すものは、いまのところ見つかっていません。

ほかに所見がなければ、
染色体の追加検査は推奨されていません

「トリソミー」の話は、
ほかにも所見がある場合のものです

検索すると「染色体異常」「18トリソミー」という言葉が並びます。怖くなるのは当然です。ただ、それらの多くは単一臍帯動脈に加えて、ほかにも気になる所見がある場合について述べられたものです。

ほかに所見がない状態を「孤立性単一臍帯動脈」と呼びます。米国母体胎児医学会(SMFM)は、孤立性の場合について「染色体異常を調べるための追加の検査は推奨しない」としています。事前の染色体スクリーニングを受けた場合でも、受けなかった場合でも同じ、とされています。

※参照元:Society for Maternal-Fetal Medicine「Consult Series #57: Evaluation and management of isolated soft ultrasound markers for aneuploidy in the second trimester」(単一臍帯動脈を扱った旧Consult #10を含めて改訂)
https://publications.smfm.org/publications/394-society-for-maternal-fetal-medicine-consult-series-57/

一方で、「ほかに所見がないかどうか」を超音波で丁寧に確認することは必要です。あなたがどちらにあたるかは、これから主治医と一緒に確認していけば大丈夫です。

単一臍帯動脈とは?
へその緒の動脈が1本の状態

臍帯の中を通る3本の血管のうち、動脈が1本しかない状態です。多くは妊娠中期の超音波検査で見つかります。

「異常」という言葉で説明されることがありますが、単一臍帯動脈は病名ではなく、超音波でみえる「所見」のひとつです。臍帯にみられる所見のなかでは、いちばん多いものです。

頻度は、
およそ100人に1人です

報告により幅がありますが、およそ100人に1人(0.2〜1%程度)とされています。双胎などの多胎妊娠では、より高い頻度で報告されています。お産を扱う病院では、日常的に目にする所見です。

※参照元:Cleveland Clinic「Single Umbilical Artery (SUA)」
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/single-umbilical-artery

残った1本が太くなって、
血流を補っていると考えられています

残った1本の動脈が太くなり、2本分の血流を補っていると考えられています。そのため多くの場合、妊娠の経過に大きな支障をきたしません。

主治医が「様子を見ましょう」と説明するのは、こうした背景があるからです。ここでの「様子を見る」とは、赤ちゃんの全身の様子と発育を、決まった時期に超音波で確認していくという意味です。何もしないで待つ、ということではありません。

赤ちゃんは大丈夫?
多くの赤ちゃんは健康に生まれています

孤立性であれば、
経過に問題のない方のほうが多いです

ほかに所見のない孤立性の場合、多くの赤ちゃんは大きな問題なく生まれています。ただし「まったく何も見なくてよい」わけではなく、発育を確認していくことがすすめられています。次の項で、その理由を数字と一緒に見ていきます。

発育や早産に早く気づくため、
健診で見守ります

孤立性の単一臍帯動脈について、複数の研究をまとめた解析(1,731件の妊娠を対象)では、3本そろっている場合と比べて次のように報告されています。

項目 3本の場合と比べた
起こりやすさ
95%信頼区間
週数の平均より小さめ(SGA) 約2.8倍 1.97〜3.83
早産 約2.1倍 1.72〜2.57
NICUへの入院 約2.1倍 1.33〜3.19
妊娠高血圧 約1.6倍 1.00〜2.63
※参照元:Kim HJ, Kim JH, Chay DB, Park JH, Kim MA.「Association of isolated single umbilical artery with perinatal outcomes: Systemic review and meta-analysis」Obstetrics & Gynecology Science(2017年)
https://doi.org/10.5468/ogs.2017.60.3.266

同じ解析では、周産期死亡の頻度もやや高い(約2.3倍)と報告されています。数字だけを見ると身構えてしまうと思いますので、読み方を添えます。

「◯倍」は割合どうしの比較です。もとの頻度が小さいものほど、倍率が大きくても実際の人数は少なくなります。この解析でも、対象となった妊娠の大多数は問題なく経過しています。そしてこの数字は、あなたの妊娠がどうなるかを決めたものではありません。

これらの報告があるからこそ、妊娠後期に赤ちゃんの発育と状態を確認していくことがすすめられています。SMFMは、孤立性単一臍帯動脈について、妊娠後期に発育を評価する超音波検査を行うこと、および妊娠36週0日以降に週1回の胎児の健康状態の評価を行うことの検討を挙げています。

※参照元:Society for Maternal-Fetal Medicine「Consult Series #57」
https://publications.smfm.org/publications/394-society-for-maternal-fetal-medicine-consult-series-57/

実際にどのくらいの間隔で確認するかは、施設の方針や経過によって異なります。「エコーの回数が増えます」と言われると不安になるかもしれませんが、これは悪いことが起きる前提で行うものではなく、変化があれば早めに気づくための確認です。

「◯◯だと危ない」という情報を、
ご自分に当てはめないでください

インターネットには「動脈が1本だと血流が足りない」「小さめだと言われたら危ない」といった断片的な情報があります。それをご自分に当てはめて怖くならないでください。

見え方も経過も一人ひとり違い、画一的な基準で語れるものではありません。あなたの赤ちゃんの状態やほかの所見と合わせて、総合的に判断されるものです。ご自分のケースについては、主治医に直接確認するのがいちばん確かです。

ほかの所見が一緒に
見つかることもあります

単一臍帯動脈は、心臓、腎臓・尿路、消化管などの所見と一緒に見つかることがあります。だからこそ、健診では赤ちゃんの全身を丁寧に確認します。

ほかに所見がなければ「孤立性単一臍帯動脈」、ほかにも所見があれば、その後の説明や進め方が変わります。まずはどちらなのかを確かめる、というのが最初のステップです。

もしほかの所見が見つかった場合も、生まれる前にわかることで、出産する施設の選択や、産後の診療体制をあらかじめ整えることができます。医療チームと一緒に準備を進めていくことになります。

これから受ける検査は、
何のためのもの?

「検査が増える」と聞くと、それだけで不安が増すかもしれません。それぞれに目的があります。知っておくだけで、見通しが立てやすくなります。

まずは、赤ちゃんの全身を
確認する超音波検査

最初に行われるのが、赤ちゃんの全身を確認する超音波検査です。心臓、腎臓・尿路、背骨、手足、消化管などを順に見ていきます。ここでほかに所見がなければ「孤立性」と判断されます。

心臓を詳しく見る検査
(胎児心エコー)

単一臍帯動脈は心臓の所見と一緒に見つかることがあるため、心臓を詳しく確認する検査(胎児心エコー)をすすめられることがあります。

一方で、通常の超音波検査で心臓がしっかり見えていて、異常が見当たらない場合には、孤立性というだけで胎児心エコーが必ず必要になるわけではないという考え方もあります。心臓が見えにくかった場合や、ほかに気になる所見がある場合などに行われるのが一般的です。受けるかどうかは、主治医とご相談ください。

検査の内容は、いつもの妊婦健診のエコーと同じです。お腹にゼリーを塗って、プローブ(探触子)をあてるだけ。痛みはありません。心臓の構造が見やすい時期は妊娠18〜22週ごろとされますが、それ以降でも確認できます。「精密検査」という言葉は怖く聞こえますが、確認するための検査です。

腎臓と羊水量の確認

妊娠中期以降の羊水は、主に赤ちゃんの尿からつくられます。そのため羊水の量は、腎臓や尿路のはたらきを推し量る手がかりになります。通常の超音波検査のなかで確認します。

染色体の検査をすすめられたら

孤立性の単一臍帯動脈のみであれば、染色体を調べる追加の検査は推奨されていません(SMFM)。ほかの所見もある場合には選択肢が示されることがありますが、受けるか受けないかはあなたとご家族が決めてよいことです。迷ったときは遺伝カウンセリングに相談できます。

妊娠中、どう過ごせばいい?
特別な安静は必要ありません

単一臍帯動脈と言われたことだけで、特別な安静や食事制限が決まるわけではありません。「動いたら悪くなる」というものでもありません。いつもの妊娠生活が土台です。

続けてほしいのは、
この3つだけです

  • 健診を予定どおり受ける
  • 胎動をなんとなく意識しておく
  • 睡眠・食事・禁煙といった基本的なこと

体調がつらいときは
「母健連絡カード」が使えます

単一臍帯動脈そのもので就業制限が必要になることは、通常はありません。ただ、不安や体調のつらさで仕事を続けるのがしんどいときに、知っておいていただきたい制度があります。

母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)

主治医に記入してもらうことで、勤務先に対して通勤緩和、勤務時間の短縮、休業などの配慮を正式に求めることができる書類です。厚生労働省のサイトからダウンロードできます。

「診断書を出してもらうのは大げさでは」と思うかもしれませんが、この連絡カードは妊婦さんのための制度です。主治医に「母健連絡カードを書いていただけますか」と伝えるだけで大丈夫です。

※参照元:厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト|母健連絡カードについて」
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/renraku_card/

お産のことが心配なあなたへ

単一臍帯動脈だけで分娩方法が決まるわけではありません。経腟分娩も帝王切開も、赤ちゃんとお母さんの状態を総合的にみて判断されます。

ただし、孤立性の場合でも早産がやや多いという報告があるため、経過によっては分娩の時期について相談が必要になることもあります。分娩を予定している施設の方針を早めに聞いておくと、気持ちの準備ができます。

赤ちゃんの状態を詳しく見る
「胎児ドック」という選択肢

臍帯の話とは別に
「赤ちゃんが元気か」を知りたいとき

診察では臍帯や発育の話が中心になりがちです。でも、あなたが本当に知りたいのは「赤ちゃんは元気なの?」ということかもしれません。

妊娠中には、赤ちゃんの体をじっくり時間をかけて見る超音波検査として「胎児ドック」という選択肢があります。通常の妊婦健診よりも詳しく、心臓・脳・腎臓・消化管・手足などの全身を確認します。

胎児ドックでは赤ちゃんの体だけでなく、胎盤の位置や性状、臍帯(へその緒)の状態、羊水の量も確認されます。

詳しくは「胎児ドック(エコー検査)とは?」をご覧ください。

受けるかどうかは、
通っている施設の方針も踏まえて

通っている施設ですでに全身を詳しく確認できている場合、胎児ドックを重ねて受けなければならないわけではありません。「心臓が見えにくいと言われた」「もう一度説明を聞きたい」「全身をまとめて確認しておきたい」——そうした気持ちがあるときの選択肢のひとつ、と考えてください。

受ける時期については「胎児ドックは初期と中期、どっちで受けるのがいい?」でも詳しく解説しています。

迷っているなら、
話を聞くだけでも大丈夫です

受けるかどうかを決める前に、まず話を聞いてみるということもできます。LINEでの問い合わせや、遺伝カウンセリングで相談してから判断される方もいらっしゃいます。

受診のときに聞いておきたい
7つの質問リスト

緊張して聞きそびれてしまうこともあると思います。このリストをスクリーンショットやメモに残して、受診時にお使いください。

  • ほかに気になる所見はありますか?(孤立性でしょうか)
  • 赤ちゃんの大きさは、週数どおりですか?
  • 心臓は、しっかり見えていますか? 詳しい検査は必要ですか?
  • 腎臓や羊水の量はどうですか?
  • 次のエコーはいつですか? そのとき何を見ますか?
  • お産までは、どのようなスケジュールで確認していきますか?
  • 仕事や生活で、気をつけることはありますか?

単一臍帯動脈に関する
よくある質問

単一臍帯動脈は
ダウン症と関係がありますか?

ほかに所見のない孤立性の場合、SMFMは染色体を調べる追加の検査を推奨していません。単一臍帯動脈という所見だけで、ダウン症などの染色体の状態が決まるわけではありません。ほかにも所見がある場合には、あわせて説明と検査の選択肢が示されます。

動脈が1本で、赤ちゃんに
酸素や栄養は足りますか?

残った1本の動脈が太くなって、2本分の血流を補っていると考えられています。多くの場合、妊娠の経過に大きな支障はありません。ただし、週数の平均より小さめになることがやや多いと報告されているため、妊娠後期に発育を確認していきます。

安静にしていたほうが
いいですか?

単一臍帯動脈という所見だけで、特別な安静が必要になることは通常ありません。体を動かすと悪くなるというものでもありません。ただし、お腹の張りや出血など気になる症状があるときは、その症状に応じた指示が出ますので、主治医の説明に従ってください。

次の妊娠でも
同じことが起きますか?

単一臍帯動脈は血管がつくられる早い時期に関わる変化で、「一度あったら必ず繰り返す」というものではありません。次の妊娠でどうなるかを予測することは難しいため、心配な場合は妊娠がわかった時点で主治医に相談してみてください。

生まれたあと、赤ちゃんに
影響はありますか?

孤立性の場合、生まれたあとに元気に過ごすお子さんがほとんどです。単一臍帯動脈は腎臓・尿路の所見と一緒にみられることがあるため、出生後に確認をすすめられることがあります。産後の診察で、小児科医や主治医に確認しておくと安心です。

胎児心エコーは
受けたほうがいいですか?

通常の超音波検査で心臓がしっかり見えていて異常が見当たらない場合、孤立性というだけで必ず必要になるわけではない、という考え方があります。心臓が見えにくかった場合や、ほかに気になる所見がある場合には検討されます。施設によって方針が異なりますので、主治医にご確認ください。

生まれてから、へその緒を
確認してもらえますか?

分娩後、胎盤と臍帯は医療者が確認します。気になる場合は、「臍帯の血管を確認していただけますか」と伝えておくとよいでしょう。出生前の所見と一致しているかを確かめることができます。

まとめ

単一臍帯動脈は病名ではなく、およそ100人に1人にみられる所見です。あなたの行動が原因ではなく、ほかに所見がなければ多くの赤ちゃんは健康に生まれています。

やることは、「ほかに所見がないかを確認する」「妊娠後期に発育と状態を見てもらう」「連絡すべきサインを覚えておく」、この3つです。

不安が続いている場合は、一人で検索を続けず、かかりつけの産婦人科や胎児医療を専門とする医療機関、遺伝カウンセリングなどに相談してみてください。「聞いてみよう」と思えたその一歩が、次の安心につながります。

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監修
FMF胎児クリニック東京べイ幕張 院長 林 伸彦先生
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院長 林 伸彦先生
           

生まれる前の赤ちゃんを診る「胎児医療」は、日本ではまだ専門家が少ない分野です。
林先生は海外で胎児医療を学び、FMF胎児クリニック東京ベイ幕張を開院。超音波検査や遺伝カウンセリングを通じて、日々胎児の健康を支えています。

           
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