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妊婦健診で「赤ちゃんの心臓のリズムが少し乱れています」と伝えられ、「心臓の病気があるのでは?」「もしかしてダウン症の兆候なのでは?」と不安になっている妊婦さんもいるでしょう。
まず知っておきたいのは、胎児不整脈があるというだけで、ダウン症候群(21トリソミー)かどうかを判断することはできないということです。
不整脈は主に心臓の「リズム」の問題です。一方、ダウン症では心室中隔欠損や房室中隔欠損など、心臓の「構造」の病気を合併することがあります。この2つを分けて考えながら、不整脈を指摘されたときに何を確認すればよいのか見ていきましょう。
胎児の不整脈にはいくつか種類があり、脈が速くなる「頻脈」と遅くなる「徐脈」、そして本来のリズムとは異なるタイミングで脈拍が乱れる「期外収縮」などに分類されます。
胎児不整脈は全妊娠の約1~2%に認められるとされ、その大部分は良性の期外収縮です。期外収縮は、赤ちゃんに限らず子どもから大人まで誰にでも起こりうる現象で、胎児の場合も自然に軽快し、治療を必要としないケースが多くあります。
一方で、頻脈または徐脈性不整脈が長く続く場合には注意が必要です。心臓から十分な血液を送り出せない状態が続くと、胎児心不全や胎児水腫につながることがあります。状態によっては、母体に抗不整脈薬を投与し、胎盤を通じて赤ちゃんを治療する「経胎盤治療」が行われる場合もあります。
参考:日本小児循環器学会「本邦における胎児先天性心疾患への出生前治療介入について」
「胎児不整脈」と「ダウン症」という言葉を一緒に目にして、不整脈がダウン症の兆候なのではないかと心配する方もいるかもしれません。
しかし、胎児不整脈があるという事実だけを根拠に、ダウン症の可能性が高い・低いと判断することはできません。胎児不整脈は心拍の速さやリズムに関する異常であり、ダウン症を診断するためのものではないためです。
そのため、不整脈を指摘された場合には、まず「どのような種類の不整脈なのか」「一時的なものなのか、持続しているのか」などを確認していくことが大切です。
胎児不整脈そのものからダウン症を判断することはできませんが、ダウン症と心臓の病気には関係があります。
日本循環器学会・日本心臓病学会・日本小児循環器学会による2024年の合同ガイドラインでは、ダウン症(21トリソミーでは約50%に先天性心疾患を合併するとされています。代表的なものとして、心室中隔欠損(VSD)、房室中隔欠損(AVSD)、心房中隔欠損(ASD)、ファロー四徴症(TOF)などがあります。
これらは、心拍のリズムに異常が生じる「不整脈」とは異なり、心臓の壁や弁、血管などの「構造」に関わる病気です。
| 胎児不整脈 | 先天性心疾患 | |
|---|---|---|
| 主に確認するもの | 心拍の速さ・遅さ・リズム | 心臓や血管の形・構造 |
| 代表例 | 期外収縮、頻脈、徐脈など | 心室中隔欠損、房室中隔欠損など |
| ダウン症との関係 | 不整脈だけではダウン症かどうか判断できない | ダウン症では先天性心疾患を合併することがある |
つまり、「不整脈があるからダウン症なのでは」と考えるのではなく、不整脈の種類を確認するとともに、必要に応じて心臓の構造や全身の状態も詳しく確認することが重要です。
参考:日本循環器学会・日本心臓病学会・日本小児循環器学会「2024年改訂版 心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン」
胎児心エコーは、お腹のなかにいる赤ちゃんの心臓を超音波で詳しく観察する検査です。心疾患に関する専門知識に基づいて診断を行うため、通常の妊婦健診で行われるエコー検査よりも、赤ちゃんの心臓の構造や動き、血流、心拍のリズムなどを詳しく確認することができます。
赤ちゃんの心臓の病気は決して珍しいものではなく、先天性心疾患はおよそ100人に1人の割合でみられるとされています。
妊婦健診などで不整脈や心臓の形の異常が疑われた場合には、必要に応じて胎児心エコーを行い、不整脈の種類だけでなく、心臓の構造や機能に問題がないかを詳しく確認します。
出産前に重い心疾患が分かれば、出生後すぐに治療できる医療機関で出産するなど、赤ちゃんを迎えるための準備を進めることもできます。近年は診断や治療が進歩しており、先天性心疾患が見つかった場合でも、病気の種類や重症度に応じて適切な治療につなげることができます。
なお、胎児心エコーはダウン症そのものを診断する検査ではありません。胎児心エコーで分かるのは、主に赤ちゃんの心臓の構造・動き・血流や不整脈などです。
医師が医学的に必要と判断し、所定の施設基準を満たす医療機関で胎児心エコー法を実施する場合には、健康保険の対象となることがあります。検査の実施体制や費用については、受診する医療機関に確認しましょう。
不整脈を指摘されたことをきっかけに、「ダウン症についても詳しく調べたほうがよいのでは」と考える方もいるでしょう。
このとき大切なのは、検査によって「分かること」が異なると理解しておくことです。
| 検査 | 主に確認すること | ダウン症との関係 |
|---|---|---|
| 胎児心エコー | 心臓の構造・動き・血流・心拍リズムなど | ダウン症そのものを診断する検査ではない |
| 胎児ドック | 赤ちゃんの全身の形態や、染色体異常に関連する超音波所見など | 超音波所見などから染色体異常の可能性を評価する |
| NIPT | 主に21・18・13トリソミーの可能性 | ダウン症の可能性を調べるスクリーニング検査。確定診断ではない |
例えば、「不整脈がどのようなものか、心臓の形にも問題がないか」を確認したい場合には胎児心エコーが重要になります。一方、「ダウン症の可能性そのものが気になる」という場合には、胎児ドックやNIPTなど、出生前検査について医師や遺伝カウンセラーに相談することになります。
どれか一つの検査ですべてが分かるわけではありません。不整脈について調べたいのか、心臓を詳しく見たいのか、染色体異常について知りたいのかによって、必要な検査は異なります。
「不整脈があります」と言われても、その一言だけではどの程度注意が必要なのか分からず、不安になってしまうことがあります。
インターネットの情報だけから「ダウン症かもしれない」と結論づけるのではなく、次の診察では以下のような点を確認すると、現在の状況を整理しやすくなります。
胎児不整脈の多くは治療を必要としないものですが、種類や持続時間によって対応は異なります。「不整脈」という言葉だけで必要以上に心配せず、赤ちゃんに今どのような所見があるのかを一つずつ確認していくことが大切です。
胎児の不整脈は全妊娠の約1~2%にみられ、その大部分は良性の期外収縮です。一方、頻脈や徐脈が長く続く場合には胎児心不全や胎児水腫につながることがあるため、詳しい評価や治療が必要になる場合があります。
また、胎児不整脈があるというだけで、ダウン症かどうかを判断することはできません。ダウン症では先天性心疾患を合併することがありますが、心臓の「リズム」の問題である不整脈と、心臓の「構造」の問題である先天性心疾患は分けて考える必要があります。
不整脈を指摘された場合には、不整脈の種類や持続性を確認し、必要に応じて胎児心エコーで心臓の構造や機能まで詳しく調べます。ダウン症そのものについて心配がある場合には、胎児ドックやNIPTなどの出生前検査について医師や遺伝カウンセラーに相談するとよいでしょう。
不整脈という言葉だけから赤ちゃんの状態を判断するのではなく、「何が分かっていて、何をこれから確認する必要があるのか」を整理しながら、一つずつ確認していくことが大切です。
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生まれる前の赤ちゃんを診る「胎児医療」は、日本ではまだ専門家が少ない分野です。
林先生は海外で胎児医療を学び、FMF胎児クリニック東京ベイ幕張を開院。超音波検査や遺伝カウンセリングを通じて、日々胎児の健康を支えています。
FetalHeart(フィータルハート)は、出生前検査や胎児医療に関する正しい情報を、悩むご家族の立場に寄り添って届けるメディアです。皆さんの悩みに寄り添い、選択するお手伝いを少しでもできれば幸いです。