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NIPTで「陽性」と告げられ、頭が真っ白になっている方もいるかもしれません。
「赤ちゃんに染色体の病気があると決まったの?」「次に何をすればいい?」「羊水検査まで待たなければいけない?」と、不安になるのは自然なことです。
まず知っておきたいのは、NIPTの陽性結果だけで、赤ちゃんの染色体疾患が確定したわけではないということです。
NIPTは、妊婦さんの血液中に含まれる、主に胎盤に由来するcfDNAを分析し、赤ちゃんに特定の染色体疾患がある可能性を調べる「非確定的検査」です。
診断を確定するためには、必要に応じて羊水検査や絨毛検査などの確定的検査を検討します。
NIPTで陽性となった方が特に気になるのが、「実際に赤ちゃんに染色体疾患がある確率はどのくらいなのか」という点でしょう。
陽性と判定された人のうち、確定検査でも対象の染色体疾患が確認された割合を「陽性的中率」といいます。
出生前検査認証制度等運営委員会が公表した2024年度の認証施設における集計では、NIPT陽性後に確定検査を受けた方の陽性的中率は、次のように報告されています。
| 対象となった染色体疾患 | 陽性的中率 | 集計の内訳 |
|---|---|---|
| 21トリソミー | 96.1% | 確定検査を受けた330例中317例 |
| 18トリソミー | 88.4% | 確定検査を受けた155例中137例 |
| 13トリソミー | 44.6% | 確定検査を受けた65例中29例 |
ただし、これらは認証施設全体の集計結果です。
この数字を、そのまま一人ひとりの確率として当てはめることはできません。
同じ「NIPT陽性」でも、対象となった染色体、妊婦さんの年齢、超音波検査の所見、検査方法などによって結果の捉え方は異なります。ご自身の場合の可能性については、結果票を持参したうえで、出生前検査に詳しい医師へ確認してください。
結果を受け取った直後は、不安からインターネットで情報を探し続けてしまうこともあります。
しかし、体験談や一般的な確率だけでは、ご自身の結果を正確に判断することはできません。
検査を受けるかどうかを含め、どのように進むかは、十分な説明を受けたうえで本人や家族が考えるものです。
「陽性だから、すぐに結論を出さなければならない」と考えず、まずは今わかっていることと、まだわからないことを整理することから始めましょう。
実際の流れは、妊娠週数、NIPTの結果、胎児超音波検査の所見、医療機関の体制などによって異なります。
NIPT陽性後に検討される主な確定的検査には、羊水検査と絨毛検査があります。
羊水検査は、胎児由来の細胞を含む羊水を調べる検査です。
絨毛検査は、胎盤のもとになる絨毛組織を調べる検査で、羊水検査より早い時期に実施できる場合があります。
| 比較項目 | 羊水検査 | 絨毛検査 |
|---|---|---|
| 主に調べる検体 | 羊水中の胎児由来細胞 | 胎盤のもとになる絨毛組織 |
| 検査時期の目安 | 妊娠15~16週以降 | 妊娠11~14週ごろ |
| 特徴 | 胎児由来の細胞を調べるため、確定検査として広く行われている | 羊水検査より早い時期に実施できる場合がある |
| 主な留意点 | 実施できる週数まで待つ必要がある | 実施施設が限られ、結果によっては羊水検査による確認が必要になる |
どちらか一方が、すべての方に適しているわけではありません。
妊娠週数、胎盤の位置、超音波所見、検査を受ける目的などを踏まえ、医師と相談して決めます。
羊水検査は一般に妊娠15~16週以降に行われます。
実際に検査を実施する週数は、医療機関の方針や妊婦さん・赤ちゃんの状態によって異なります。
超音波で赤ちゃんや胎盤の位置を確認しながら、妊婦さんのお腹に細い針を刺して羊水を採取します。
羊水中に含まれる胎児由来の細胞を用いて、染色体や遺伝子など、目的に応じた解析を行います。
検査方法に応じて、21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーをはじめとする染色体の数や構造の変化などを調べます。
ただし、染色体疾患が確認された場合でも、症状の程度、合併症の有無、出生後の発達や経過までを羊水検査だけで判断することはできません。
NIPTで13・18・21番染色体以外の変化を指摘されている場合や、胎児超音波検査で形態的な所見が確認されている場合には、通常の染色体検査以外の解析が検討されることがあります。
どの検査方法が適しているか、染色体マイクロアレイ検査などを実施できる医療機関で相談しましょう。
| 調べるもの | 羊水中に含まれる胎児由来の細胞 |
|---|---|
| 検査の方法 | お腹から針を刺して羊水を採取し、目的に応じて染色体や遺伝子を解析 |
| 検査可能な時期 | 一般に妊娠15~16週以降 |
| 流産のリスク | こども家庭庁掲載の専門委員会報告書では、約1/300~1/500と記載 |
| 痛み | 針を刺すときに痛みを感じることがあります。痛みの感じ方には個人差があります |
| 結果がわかるまでの日数 | 解析方法により数日~数週間程度 |
| 費用 | 自費診療。医療機関や解析方法によって異なるため、事前確認が必要 |
絨毛検査は一般に妊娠11~14週ごろに行われます。
NIPTの結果が妊娠初期に判明した場合、羊水検査より早い時期に検討できることが特徴です。
胎盤のもとになる絨毛組織を採取し、染色体や遺伝子を調べます。
お腹から針を刺して採取する経腹法と、腟から子宮頸管へ器具を入れて採取する経腟法があります。
検査方法に応じて、染色体の数や構造の変化、特定の遺伝子疾患などを調べます。
一部の染色体については、迅速検査により比較的早く暫定的な結果が得られることもあります。
絨毛検査で採取するのは、赤ちゃん自身の細胞ではなく胎盤の組織です。
胎盤だけに染色体の異なる細胞が含まれる「胎盤限局性モザイク」などが認められた場合には、赤ちゃんの染色体を確認するため、羊水検査が必要になることがあります。
| 調べるもの | 胎盤のもとになる絨毛組織 |
|---|---|
| 検査の方法 | お腹から針を刺す方法、または腟から器具を入れる方法で絨毛を採取し、染色体や遺伝子を解析 |
| 検査可能な時期 | 一般に妊娠11~14週ごろ |
| 流産のリスク | 侵襲的検査のため流産のリスクがあります。採取方法や施設によって説明が異なるため、担当医に確認が必要 |
| 痛み | 局所麻酔を使用することがあります。痛みや違和感の程度には個人差があります |
| 結果がわかるまでの日数 | 解析方法により数日~数週間程度 |
| 費用 | 自費診療。医療機関や解析方法によって異なるため、事前確認が必要 |
NIPTで陽性と判定されても、確定検査では対象の染色体疾患が確認されないことがあります。これを「偽陽性」といいます。
NIPTで分析しているcfDNAは「胎児由来DNA」と呼ばれることもありますが、その多くは胎盤に由来します。
そのため、胎盤と赤ちゃんの染色体の状態が一致しない場合などに、NIPTと確定検査の結果が異なることがあります。
結果に影響する可能性がある要因として、次のようなものがあります。
どの原因が当てはまるかは、NIPTの結果だけでは判断できません。
偽陽性の可能性があるからこそ、NIPTだけで診断を決めず、必要に応じて確定的検査を検討します。
胎児ドックは、妊娠週数に応じて赤ちゃんの全身を詳しく観察する胎児超音波検査です。
NIPTで陽性となった後に胎児ドックを受けることで、赤ちゃんの形態や発育を確認し、今後の検査や妊娠管理を考えるための情報を得られる場合があります。
胎児ドックは、羊水検査や絨毛検査の代わりになる確定検査ではありません。
一方で、「赤ちゃんの今の状態を知りたい」「確定検査を選ぶ前に、超音波所見について確認したい」という場合には、医師へ相談する選択肢があります。
NIPTで陽性となったからといって、すべての方が同じ検査を受けなければならないわけではありません。
確定検査を受けるか考えるときには、次のような点を整理してみましょう。
妊娠を継続すると決めている場合でも、出産する医療機関や出生後の治療体制を整えるために、検査結果が役立つことがあります。
一方で、確定検査に伴うリスクを考え、検査を受けずに超音波検査などで経過を見守ることを希望する方もいます。
大切なのは、誰かに結論を決めてもらうことではなく、医学的な情報と支援について説明を受け、ご自身やご家族が納得できる選択を考えることです。
診察室では緊張して、聞きたかったことを忘れてしまうことがあります。質問をスマートフォンや紙にメモし、可能であればパートナーや信頼できる方と一緒に説明を聞くのも一つの方法です。
NIPTで陽性となった後は、「羊水検査を受けられる時期まで待つしかない」と感じる方もいるでしょう。
しかし、羊水検査を待つ間にも、結果について詳しい説明を受けたり、遺伝カウンセリングで考えを整理したり、胎児超音波検査で赤ちゃんの状態を確認したりすることができます。
また、妊娠11~14週ごろで、胎盤の位置などの条件を満たす場合には、絨毛検査を検討できることがあります。
ただし、絨毛検査はすべての方に適しているわけではなく、結果によっては羊水検査による確認が必要です。
「早く結果を知りたい」という気持ちだけで検査を決めるのではなく、何がわかり、何がわからないのか、どのような追加検査が必要になる可能性があるのかまで確認しましょう。
確定検査で染色体疾患が確認された場合も、検査結果の数字だけで、赤ちゃんやご家族の将来のすべてが決まるわけではありません。
対象となる疾患の特徴に加えて、赤ちゃんの合併症や超音波所見、出生後に受けられる治療、福祉制度、家族への支援についても説明を受けましょう。
必要に応じて、次のような人や機関へ相談できます。
医学的な説明だけでなく、実際の子どもや家族の暮らし、利用できる支援について知ることも、納得できる判断をするための大切な情報です。
確定ではありません。NIPTは、特定の染色体疾患がある可能性を調べる非確定的検査です。診断を確定するためには、必要に応じて羊水検査や絨毛検査を検討します。
検査の感度や特異度と、陽性となった人のうち実際に疾患が確認される割合である陽性的中率は、同じものではありません。陽性的中率は、対象となる染色体や妊婦さんの年齢などによって変わります。
NIPTを再度受けても、確定診断にはなりません。陽性結果について確認する場合は、同じ非確定的検査を繰り返すのではなく、結果説明や遺伝カウンセリングを受け、確定的検査について相談することが大切です。
胎児ドックで明らかな所見が確認されなくても、染色体疾患がないとは言い切れません。反対に、超音波所見だけで染色体疾患を確定することもできません。NIPTと胎児超音波検査は、わかる内容が異なる検査です。
一律にどちらがよいとはいえません。妊娠週数、胎盤の位置、超音波所見、検査を受ける目的、実施施設などによって適した選択肢は異なります。出生前検査に詳しい医師と相談してください。
今夜中にすべての結論を出す必要はありません。まずは次の受診で聞きたいことを書き出し、パートナーや信頼できる人に気持ちを話してみましょう。不安が強く日常生活に支障が出ている場合は、医療機関や自治体の相談窓口へ連絡してください。
※本ページは、NIPT陽性後の一般的な情報を提供するものであり、個別の診断や医療上の判断に代わるものではありません。検査結果や今後の方針については、結果票を持参し、出生前検査に詳しい医師や遺伝カウンセラーへご相談ください。
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生まれる前の赤ちゃんを診る「胎児医療」は、日本ではまだ専門家が少ない分野です。
林先生は海外で胎児医療を学び、FMF胎児クリニック東京ベイ幕張を開院。超音波検査や遺伝カウンセリングを通じて、日々胎児の健康を支えています。
FetalHeart(フィータルハート)は、出生前検査や胎児医療に関する正しい情報を、悩むご家族の立場に寄り添って届けるメディアです。皆さんの悩みに寄り添い、選択するお手伝いを少しでもできれば幸いです。
林 伸彦先生より
“今できること”があります
NIPTで「陽性の可能性がある」と告げられたとき、
「すぐにでも何か知りたい」「待つしかないのがつらい」
――そう思うのは、ごく自然な反応です。
たしかに、羊水検査は妊娠16週以降でなければ実施できません。
でも、その間“ただ待つ”だけではなく、“今できる選択肢”があることも知っておいてください。
・妊娠11週ごろから受けられる絨毛検査
・赤ちゃんの全身を詳しく観察できる胎児ドック
こうした方法によって、「何がわかっていて、何がわからないか」を整理することができます。
私たち医療者の役割は、「検査結果をただお渡しする」だけではなく、
その検査がどういう意味を持つのか、その検査結果の次にどのような検査が必要なのかなど、
必要なときに、必要な情報を、正しく届けること。 そして、一緒に冷静に状況を把握し、その方にとって最善の道を探すことです。
不安や迷いは、一人で抱えこまず、どうか信頼できる医療者と共有してください。
その一歩が、きっと、ご家族にとっての安心につながるはずです。