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不妊治療を経てやっと授かった命。嬉しいはずなのに「NIPTを受けるべきなのか」と検索を繰り返しては答えが出せず、疲れてしまっていませんか。
出生前検査は受ける権利だけでなく受けない権利もあります。受けないという選択が赤ちゃんを大切にしていないということでは決してありません。
このページでは「不妊治療と染色体異常の関係」「NIPTを受けるメリットとデメリット」「NIPT以外の選択肢」「迷ったときの相談先」の順に整理します。答えを急がなくて大丈夫です。
何年も治療を続けて採卵や移植を重ね、判定日に何度も落ち込んで。ようやく心拍が確認できたその先で「検査を受けるかどうか」という問いに向き合わなければならない。
この順番のつらさは不妊治療を経験した方にしかわからないものだと思います。
「知りたい」と「知るのが怖い」が同時にあるのは矛盾ではありません。どちらもこの子を大切に思う気持ちから出てきているものです。
よく聞かれること:「検査を考えること自体、赤ちゃんに申し訳ない気がします」
そう感じてしまいますよね。でも検査を考えるということは、赤ちゃんのことを真剣に考えているということでもあります。ご自分を責めないでください。
不妊治療を経て妊娠される方は30代後半から40代前半の方が多くいらっしゃいます。そのため「高齢出産」という言葉と「染色体異常」という言葉が、同時に頭をよぎりやすくなります。
さらに「次の妊娠があるとは限らない」という思いも重なります。若い方の「もし次があれば」とは抱えているものの重さが違います。
だからこそ正確な情報に基づいて考えることが、少しだけ気持ちを軽くしてくれることがあります。次の章から事実を一つずつ確認していきます。
「体外受精だから赤ちゃんに何かあるのでは」と心配される方は少なくありません。
しかし生殖補助医療(ART:体外受精や顕微授精などの治療の総称)そのものが21トリソミー(ダウン症)などの染色体異常を増やすという確かな根拠は、現時点では報告されていません。
2022年に発表された総説では「これらの技術が21トリソミーのような遺伝的疾患のリスクを高めるという証拠は、現時点では存在しない」と述べられています。体外受精での染色体数の異常の頻度は自然妊娠と同程度です。異常は卵子・精子の状態やご夫婦の年齢に関連して起こるもので、治療の手技そのものによるものではないとされています。
また体外受精・顕微授精で妊娠した1,496人と自然妊娠の1,396人の出生前染色体検査を比較した2022年の研究でも、新たに生じた染色体異常の割合は6.75%と6.16%で統計的な差は見られなかったと報告されています。
「自分が治療を選んだせいで」と考えてしまう方がいらっしゃいますが、不妊治療を選んだことが原因ではありません。その選択があったからこそ今赤ちゃんがいるのです。
一方で年齢とともに染色体異常の頻度が少しずつ上がることは知られています。卵子は生まれる前につくられて年齢とともに一緒に年を重ねていくため、細胞分裂の際に染色体の分かれ方にずれが生じやすくなると考えられています。
出生前検査認証制度等運営委員会(日本医学会)のサイトでは出産時の年齢別に次のような頻度が示されています。
| 出産時の年齢 | ダウン症のある 赤ちゃんが生まれる頻度 |
そうでない 赤ちゃんの割合 |
|---|---|---|
| 30歳 | 約959人に1人 | 約99.9% |
| 35歳 | 約338人に1人 | 約99.7% |
| 40歳 | 約84人に1人 | 約98.8% |
同サイトでは年齢別のグラフについて重要な指摘がされています。グラフの縦軸の最大値を10%にすると急上昇しているように見えますが、縦軸の最大値を100%にして書き直すとその差はほとんど見えなくなるというものです。
「年齢が上がると確率も上がる」は事実です。ただその上がり方をどう受け止めるかは、グラフの描き方ひとつで変わってしまうほど繊細なものでもあります。
年齢別の確率については「年齢別にダウン症の確率と注意点を解説」でも詳しくお伝えしています。
NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)は、お母さんの血液を採って21トリソミー・18トリソミー・13トリソミーの可能性を調べる検査です。お腹に針を刺さないため、検査そのものによる流産のリスクはないとされています。
受けてよかったと感じる理由として次のような声があります。
ただしこの検査で調べられるのは特定の3つの染色体疾患だけで、赤ちゃんのすべてがわかるわけではありません。「陰性=何も心配がない」という意味ではない点はあらかじめ知っておいていただきたいところです。
NIPTの詳しい内容は「NIPTとは?わかること・精度・費用と検査結果の見方」をご覧ください。
もっとも大きいのは陽性という結果を受け取ったときの心の負担です。とくに不妊治療を経た方にとってはその重さが想像以上のものになることがあります。
そしてもう一つ必ず知っておいていただきたいことがあります。
NIPTは「非確定的検査」です
厚生労働省の専門委員会報告書では「NIPTは、非確定的検査であるため、検査結果が陽性であった場合、絨毛検査・羊水検査等の確定的検査を実施する必要がある」と記載されています。
また同報告書は「一定の頻度で偽陽性が発生し、若年妊婦では検査前確率が低いため陽性的中率は低くなる傾向にある」とも述べています。陽性という結果は確定した診断ではありません。
日本産科婦人科学会も非確定的な出生前遺伝学的検査について、検査前に遺伝カウンセリングを実施する必要があるとしています。
つまりNIPTは「受けて終わり」の検査ではありません。結果をどう受け止めて次にどうするかまで含めて考えておくことが、この検査では大切になります。
検査を受けるかどうかを決める前に次のことを話しておくと、結果が出たあとに慌てずにすみます。
答えがすぐに出なくても大丈夫です。話し合えないまま迷っていること自体が、遺伝カウンセリングで相談してよい内容です。
「赤ちゃんが元気かどうか知りたい」という気持ちに応える方法はNIPTだけではありません。
| NIPT | 胎児ドック (超音波検査) |
|
|---|---|---|
| 調べ方 | お母さんの採血 | 超音波(エコー) |
| 主に見るもの | 21・18・13トリソミーの可能性 | 心臓・脳・腎臓・手足などの 形や働き |
| 時期の目安 | 妊娠10週頃以降 | 初期11〜13週/中期18〜22週 |
| 位置づけ | 非確定的検査 | 形態のスクリーニング |
染色体の数の可能性を調べるのがNIPT、体のつくりを見るのが胎児ドックです。見ているものが違うのでどちらかが優れているというものではありません。
胎児ドックについては「胎児ドック(エコー検査)とは?」をご覧ください。
NIPTでは染色体の一部の疾患しか調べられず、胎児ドックでは染色体そのものを確定することはできません。それぞれに見えないところがあるため組み合わせて受ける方もいらっしゃいます。
どちらか一方だけを受ける方も、どちらも受けない方もいます。どの選び方にもその方なりの理由があります。
受ける時期については「胎児ドックは初期と中期、どっちで受けるのがいい?」で詳しく解説しています。
遺伝カウンセリングは検査を受けると決めた人だけのものではありません。「受けるかどうか迷っている」という段階で相談して構いません。
認定遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医は検査をすすめる立場ではありません。あなたたちが自分で決められるよう、情報と時間を整える役割を担っています。
次のようなことをそのまま持ち込んで大丈夫です。
認定遺伝カウンセラーの役割については「認定遺伝カウンセラーとは?役割やサポート内容を解説」をご覧ください。
不妊治療そのものが染色体異常の原因になるという確かな根拠は報告されていません。長い治療を選んだことをどうか責めないでください。
NIPTは非確定的検査であり、陽性でも確定した診断ではありません。受けるか受けないかに医学的に正しい唯一の答えはないのです。
迷っているなら遺伝カウンセリングで話をするところから始めてみてください。検査を受けると決める前に相談できるのが「遺伝カウンセリング」です。
一人で検索を続けて眠れない夜が続いているなら、かかりつけの産婦人科や胎児医療を専門とする医療機関、認定遺伝カウンセラーにその気持ちごと相談してみてください。
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生まれる前の赤ちゃんを診る「胎児医療」は、日本ではまだ専門家が少ない分野です。
林先生は海外で胎児医療を学び、FMF胎児クリニック東京ベイ幕張を開院。超音波検査や遺伝カウンセリングを通じて、日々胎児の健康を支えています。
FetalHeart(フィータルハート)は、出生前検査や胎児医療に関する正しい情報を、悩むご家族の立場に寄り添って届けるメディアです。皆さんの悩みに寄り添い、選択するお手伝いを少しでもできれば幸いです。