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NIPTとクアトロテストは、どちらも妊婦さんの血液を採取し、赤ちゃんに特定の染色体疾患などがある可能性を調べる「スクリーニング検査」です。
ただし、検査の仕組み、対象となる疾患、受けられる妊娠週数、結果の示され方には違いがあります。
対象となる染色体疾患に対する検査性能を比較すると、一般的にNIPTの方が高いとされています。しかし、すべての妊婦さんにNIPTが適しているわけではありません。何を知りたいのか、いつ検査を受けたいのか、結果が出た後にどうしたいのかによって、適した選択は変わります。
このページでは、NIPTとクアトロテストの違いを比較するだけでなく、自分たちが納得できる選択をするための考え方まで解説します。
※本ページは出生前検査に関する一般的な情報を提供するものであり、個別の診断や受検の判断に代わるものではありません。検査を希望する場合や迷いがある場合は、かかりつけの産婦人科や遺伝カウンセリングを実施している医療機関へご相談ください。
NIPTとクアトロテストでは、検査の仕組み、対象疾患、受けられる時期、結果の示され方などが異なります。主な違いは以下のとおりです。
| NIPT | クアトロテスト | |
|---|---|---|
| 検査方法 | 母体血中に含まれる、主に胎盤に由来するDNA断片を解析する | 母体血中の4つの成分と、妊娠週数や母体年齢などの情報を用いて確率を算出する |
| 検査を受ける時期 |
一般的に妊娠10週以降
※実施可能な時期は医療機関によって異なります。 |
一般的に妊娠15~21週頃
※結果後に羊水検査を検討する可能性がある場合は、受検時期を早めに医師へご相談ください。 |
| 主に調べること (非確定的検査) |
21トリソミー 18トリソミー 13トリソミー ※認証施設における一般的な検査対象です。 |
21トリソミー 18トリソミー 開放性神経管奇形 |
| 結果の示され方 | 疾患ごとに「陽性」「陰性」「判定保留」 | 「1/500」など、疾患がある可能性を示す確率 |
| 検査性能 |
対象となる3つのトリソミーに対して、クアトロテストより高い検出率が期待できる
※検査性能は疾患や検査方法によって異なります。 |
NIPTと比べると検出率が低く、母体年齢など複数の情報が結果に影響する |
| 検査費用の目安 |
10~20万円程度
※医療機関や検査内容によって異なります。 |
2~3万円程度
※医療機関によって異なります。 |
| 陽性・高確率だった場合 | 遺伝カウンセリングなどを受け、羊水検査等の確定的検査を検討する | 結果や妊娠週数を踏まえ、NIPTや羊水検査等の次の検査を医師と相談する |
| 確定診断か | 確定診断ではない | 確定診断ではない |
| 検査だけではわからないこと | すべての染色体疾患、遺伝性疾患、心臓や手足などの形態異常 | すべての染色体疾患、遺伝性疾患、心臓や手足などの形態異常 |
NIPTは、対象となる染色体疾患に対して高い検査性能を持つことが特徴です。一方、クアトロテストはNIPTより費用を抑えやすく、NIPTでは通常対象とならない開放性神経管奇形の可能性も評価できるという違いがあります。
どちらが一方的に優れているというより、検査で何を知りたいのか、結果をどのように受け止め、その後どうしたいのかまで考えて選ぶことが大切です。
クアトロテストは、妊婦さんの血液中に含まれる4つの成分であるAFP、非抱合型エストリオール、hCG、インヒビンAを測定する母体血清マーカー検査です。
測定した数値に、妊娠週数、母体年齢、体重などの情報を組み合わせ、21トリソミー、18トリソミー、開放性神経管奇形がある可能性を統計的に算出します。
赤ちゃんや胎盤のDNAを解析する検査ではないため、結果は「ある・ない」ではなく、「1/500」「1/1000」といった確率で示されます。
NIPTは、妊婦さんの血液中に含まれるcfDNAと呼ばれるDNA断片を解析する検査です。NIPTで解析される「胎児由来」と呼ばれるDNA断片は、実際には主に胎盤に由来しています。
認証施設では、主に21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーについて、対象となる染色体のDNA断片が多いか少ないかを調べます。
NIPTは赤ちゃんの細胞そのものを直接調べる検査ではありません。そのため、胎盤と胎児の染色体の状態が一致しない場合などには、偽陽性や偽陰性となる可能性があります。
結果は疾患ごとに「陽性」「陰性」「判定保留」と示されますが、陽性であっても疾患が確定したわけではありません。
クアトロテストは、母体の血液に含まれる4種類の成分を測定し、21トリソミー、18トリソミー、開放性神経管奇形がある可能性を評価する検査です。
一般的に妊娠15~21週頃に受けられますが、検査結果を受けて羊水検査などを検討する可能性もあります。検査を希望する場合は、受ける時期について早めに医師へ相談することが大切です。
クアトロテストは採血のみで行うため、検査そのものによって流産を引き起こすような、胎児への直接的な危険は基本的にありません。
また、一般的にNIPTよりも費用を抑えやすく、染色体疾患だけでなく、開放性神経管奇形の可能性も評価できる点が特徴です。
開放性神経管奇形には二分脊椎や無脳症などが含まれ、認証施設で行われる一般的なNIPTでは通常検査対象になりません。
クアトロテストは、対象となる染色体疾患に対する検出率がNIPTより低いとされています。
また、結果の算出には母体年齢などの情報が用いられます。母体年齢が高い場合は、検査前から設定される染色体疾患の確率が高くなるため、結果も高確率として示されやすくなります。
結果はあくまで統計的な確率であり、高確率だから疾患がある、低確率だから疾患がないと断定することはできません。
さらに、NIPTよりも検査時期が遅いため、高確率という結果を受け取った後、次の検査について比較的短い期間で判断しなければならない場合があります。
NIPTは、母体の血液中に含まれる主に胎盤由来のDNA断片を解析し、赤ちゃんに特定の染色体疾患がある可能性を調べる検査です。
認証施設では、21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーの3つが検査対象となっています。一般的に妊娠10週以降から受けることができ、疾患ごとに「陽性」「陰性」「判定保留」という結果が示されます。
一部の医療機関では、上記3疾患以外の染色体についても検査する場合があります。ただし、対象となる疾患が増えれば、必ずしも妊婦さんにとって有用な情報が増えるとは限りません。
検査対象となる疾患の頻度、検査性能、陽性となった後の確定的検査や支援体制について、検査前に十分な説明を受けることが重要です。
NIPTは、21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーに対して、クアトロテストより高い検出率が期待できる検査です。
妊娠10週頃から受けられるため、クアトロテストより早い時期に検査を検討できます。また、採血のみで行うため、検査そのものによって胎児に直接触れたり、流産の危険を伴ったりする検査ではありません。
陰性の場合、対象となる3つの染色体疾患がある可能性は低いと考えられます。ただし、すべての染色体疾患や先天性疾患を否定できるわけではありません。
NIPTは、一般的にクアトロテストより検査費用が高額です。
また、検査性能が高くても確定診断ではありません。陽性の場合は、結果だけで重要な判断をせず、遺伝カウンセリングなどを受けたうえで、羊水検査等の確定的検査を検討します。
NIPTでは一定の割合で「判定保留」となることもあります。判定保留の場合は、再度NIPTを行う、羊水検査を検討する、追加の検査を行わないなどの選択肢について医療者と相談します。
さらに、一般的なNIPTは主に特定の染色体の数を調べる検査であり、心臓、脳、腎臓、手足などの形態異常を直接調べる検査ではありません。
NIPTについて調べると、「精度99%」「99%以上の高精度」といった表現を目にすることがあります。
しかし、医療検査における「精度」には、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率など、異なる意味を持つ複数の指標があります。「99%」という数字だけでは、検査結果を正しく理解できません。
感度とは、実際に対象疾患がある場合に、検査で陽性となる割合です。
一方、陽性的中率とは、検査で陽性となった人のうち、実際に対象疾患があった割合です。
たとえば「感度が99%」という説明は、「陽性となった人の99%に疾患がある」という意味ではありません。
陽性的中率は、対象となる疾患、妊婦さんの年齢、検査前にその疾患があると考えられる確率などによって変わります。そのため、NIPTで陽性となった場合も、羊水検査などによる確認が必要です。
偽陽性とは、検査では陽性だったものの、確定的検査では対象疾患が確認されなかった場合を指します。
偽陰性とは、検査では陰性だったものの、実際には対象疾患があった場合です。
NIPTはクアトロテストと比べて偽陽性や偽陰性が少ない傾向にありますが、完全になくなるわけではありません。また、検査に必要なDNA断片の割合が不足している場合などには、陽性・陰性を判断できない「判定保留」となることもあります。
検査結果を受け取る際は、結果の言葉だけで判断せず、その結果がどの程度確からしいのか、次にどのような選択肢があるのかについて説明を受けることが重要です。
検査性能だけを比べるとNIPTに目が向きやすいかもしれません。しかし、出生前検査は、数字の高い検査を選べばよいというものではありません。
どちらを受けるか迷っている場合は、次の観点から自分たちの希望を整理してみましょう。
「NIPTとクアトロテストのどちらが優れているか」だけでなく、自分たちは何を知り、その結果をどのように生かしたいのかを考えることが大切です。
上記は検査を機械的に振り分ける基準ではありません。実際にどの検査が適しているかは、妊娠週数や超音波検査の所見、既往歴、本人や家族の希望などによって変わります。
陰性の場合、対象となる21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーがある可能性は低いと考えられます。
ただし、NIPTの対象外となる染色体疾患、遺伝性疾患、心臓や脳などの形態異常まで否定できるわけではありません。通常の妊婦健診や、必要に応じた超音波検査は引き続き受けます。
陽性は、対象疾患がある可能性が高いという結果ですが、確定診断ではありません。
遺伝カウンセリングなどで結果の意味や選択肢について説明を受け、羊水検査等の確定的検査を受けるかどうかを検討します。
NIPTの陽性結果だけで、疾患の有無を確定したり、妊娠に関する重要な判断をしたりすることはできません。
判定保留は、陽性でも陰性でもなく、検査で判定できなかったという結果です。
再度NIPTを行う、羊水検査を検討する、別の検査を行う、追加検査を行わないなどの選択肢があります。判定保留となった理由や妊娠週数によって選択肢が変わるため、医療者へ相談します。
クアトロテストで高確率と示されても、対象疾患が確定したわけではありません。
示された確率、妊娠週数、超音波検査の結果などを踏まえ、NIPTや羊水検査等の次の検査について相談します。
妊娠週数によっては判断できる時間が限られる場合があるため、結果を受け取った後は早めに医療機関へ相談しましょう。
出生前検査について、「赤ちゃんの状態を早く知り、準備をしたい」と考える一方で、「治すことが難しい病気について知ることで、不安が大きくなるのが怖い」と感じる人もいます。
厚生労働科学研究で行われた出生前検査に関する調査でも、8割以上の女性が「赤ちゃんの状態を知れば準備ができる」と考える一方、「分かっても治せないのであれば不安になる」という思いも抱いていたことが報告されています。
知りたい気持ちと、知るのが怖い気持ちは、矛盾するものではありません。
検査を受けるか迷うのは、知識が足りないからとは限りません。それだけ大切な選択だからこそ、簡単には決められないのだと考えられます。
検査を受けるか、どの検査を受けるか、検査を受けないかについて、すぐに結論が出ない場合は、かかりつけの産婦人科や遺伝カウンセリングを実施している医療機関へ相談してみましょう。
編集チームが行った調査では、出生前検査の受検状況について回答した207人のうち、それぞれの検査を受けたと回答した割合は以下のとおりでした。
※複数の検査を受けた人がいるため、回答割合の合計は100%を超えます。
この調査では、NIPTやクアトロテストを受けた人だけでなく、いずれも受けていない人も多く見られました。出生前検査を受けないことも含め、選択は一人ひとり異なります。
※調査について
調査名:ご自身に関するアンケート
調査方法:インターネットリサーチ(調査機関:ファストアスクアンケート)
実施期間:2025年3月24日~28日
対象:全国の3年以内に妊娠・出産を経験した女性
全体の有効サンプル数:221名
出生前検査の受検状況に関する設問の有効回答数:207名
回答方法:複数回答
※記載している年齢は調査時点の年齢です。
アンケートでは、クアトロテストを受けた後にNIPTを受けたと回答した人もいました。
ただし、クアトロテストで高確率となった後にどの検査を行うかは、妊娠週数、超音波検査の結果、本人の希望などによって異なります。NIPTを受けるか、羊水検査等の確定的検査を受けるかについては、自己判断せず医療者へ相談してください。
※上記はアンケート回答者の経験をまとめたものであり、特定の検査を推奨するものではありません。
NIPTとクアトロテストは、主に特定の染色体疾患などがある可能性を評価する血液検査です。
一方、胎児ドック、精密胎児超音波検査などと呼ばれる検査では、超音波を用いて、赤ちゃんの心臓、脳、腎臓、骨、手足などの形態や発育を確認します。
血液検査と超音波検査では、調べる対象と役割が異なります。胎児超音波検査は、NIPTやクアトロテストより優れた検査というわけでも、血液検査を完全に置き換える検査でもありません。
また、「胎児ドック」「精密胎児超音波検査」といった名称が同じでも、医療機関によって検査時期や確認する内容が異なる場合があります。検査を受ける際は、何を調べる検査なのか、どこまで分かるのかを事前に確認しましょう。
NIPTやクアトロテストで陰性・低確率だった場合も、すべての形態異常が否定されたわけではありません。反対に、超音波検査だけですべての染色体疾患を確定したり、否定したりすることもできません。
NIPTとクアトロテストのどちらを選んだから正しい、間違っているということはありません。
赤ちゃんについて知りたいこと、検査結果の受け止め方、陽性や高確率だった場合に希望すること、家庭の状況や価値観は、人によって異なります。
検査を検討するときは、夫婦や家族で次のことを話し合ってみましょう。
夫婦や家族だけで答えを出そうとすると、考えがまとまらなかったり、意見が食い違ったりすることもあります。
そのような場合は、遺伝カウンセリングなどを通じて、検査で分かること、分からないこと、結果後の選択肢について説明を受けることができます。一人で抱え込まず、納得できるまで相談することが大切です。
すべての人が両方の検査を受ける必要はありません。検査対象や検査性能、受けられる時期が異なるため、何を知りたいのかを整理し、医師や遺伝カウンセリングの担当者へ相談しましょう。
妊娠週数や医療機関の方針によっては、クアトロテスト後にNIPTを検討できる場合があります。
ただし、高確率という結果を受けた後は、NIPTではなく羊水検査等の確定的検査を検討する場合もあります。次の検査については、妊娠週数や検査結果を踏まえて医療者へ相談してください。
NIPTで陰性となっても、すべての先天性疾患や形態異常が否定されたわけではありません。
NIPTと胎児超音波検査では調べる対象が異なります。通常の妊婦健診や、医師から提案された超音波検査は引き続き受けましょう。
確定しません。NIPTはスクリーニング検査であり、陽性でも実際には対象疾患がない偽陽性の可能性があります。
結果を確定するためには、一般的に羊水検査等の確定的検査が必要です。
低確率という結果は、対象疾患がある可能性が基準値より低いことを示しますが、疾患がないことを保証するものではありません。
また、クアトロテストの対象外となる染色体疾患や形態異常については、この結果だけでは判断できません。
出生前検査は、原則として本人や家族が説明を受け、希望した場合に受ける検査です。検査を受けないという選択もあります。
受けるかどうか迷っている場合は、検査を受けることを前提とせず、まず遺伝カウンセリングなどで話を聞くこともできます。
記事内容は公開時点の情報に基づいています。検査対象、費用、受けられる妊娠週数、検査後の対応は医療機関によって異なるため、受検前に各医療機関へご確認ください。
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生まれる前の赤ちゃんを診る「胎児医療」は、日本ではまだ専門家が少ない分野です。
林先生は海外で胎児医療を学び、FMF胎児クリニック東京ベイ幕張を開院。超音波検査や遺伝カウンセリングを通じて、日々胎児の健康を支えています。
FetalHeart(フィータルハート)は、出生前検査や胎児医療に関する正しい情報を、悩むご家族の立場に寄り添って届けるメディアです。皆さんの悩みに寄り添い、選択するお手伝いを少しでもできれば幸いです。
林 伸彦先生より
“どちらに納得できるか”で
考えてみませんか?
NIPTとクアトロテスト、どちらを選べばいいか迷っている――。
そのお気持ちはとても自然ですし、どちらか一方が「正しい」というわけではありません。
それぞれの検査には、精度・費用・時期・結果の出し方などに違いがあります。
でも一番大切なのは「自分たちが納得できるか」という視点です。
たとえば、
・結果の正確さを重視する方、
・検査後の行動まで見据えて考えたい方
にはNIPTが合っているかもしれません。
一方で、、
・費用を抑えたい方、
・手軽に検査を受けたい方
にはクアトロテストも良い選択肢です。
・どの検査を受けたらよいかわからない
・特定の疾患をチェックするのではなく、胎児が健康かどうか、全般的に知りたい
という方には、妊娠初期の胎児ドックがよい選択肢です。
「どの検査を受けるか」は、夫婦で考えることではありません。
どの時期に、どんなことを、どんな目的で知りたいか、を夫婦がどう考えているのか整理し、どの検査が適切かを提案するのは医療者の役割です。
出生前検査について、疑問や不安がある時には、胎児診療を行っているところでの遺伝カウンセリングを受けてみると良いでしょう。場合によっては、なにも検査を受けないという選択をするかもしれませんが、家族が納得する選択に行き着くのが一番大切なことです。